By / 影響を受けた物語 influenced stories それは実家に置いてあった本でした。初めて読んだのが何歳の頃だったかははっきりと覚えていないのですが、おそらく小学校低学年くらいだったのではないかなと思います。荒地を歩き続けて疲れきっていた旅人が、1人の年老いた羊飼いに出会いその男の小屋に泊めさせてもらった時に目にしたのがたくさんのどんぐりを一つ一つ丁寧に仕分け、袋に入れる男の姿。翌日行動を共にした旅人は、誰の土地でもない荒地に男が1人黙々とどんぐりを埋めている事を知るのであった・・・。そう、あの有名な、ジャン・ジオノの『木を植えた男』です。ほとんど不毛の地に何万本にも至る木をコツコツと植え続けかつては荒廃し、人も少なかったその地を再び訪れた旅人が目にしたのは生い茂る森や噴水、何組もの若い夫婦たち。薄い絵本だったと思いますが、土だらけの荒地に一面の緑に蘇った風景画は幼い心にも深い感動を覚えたことを記憶しています。今でもその本は実家にありますが、手元にも持っておきたいと思い数年前に購入。当時読んだ絵本とは違いますが、あの時の感動は今も色褪せないままです。大学生になり、宮沢賢治の『虔十公園林』という童話を読んだ時も再びあの時と同じように感動している自分がいました。周りからは、少し足りないと思われ馬鹿にされている虔十は一生の間に700本の木を植え、やがてその場所は子どもたちの遊び場として不可欠な場所になっていくというストーリー。感動し、いつまでも心に残っている物語のエピソードが何故かどちらも似ているんです。もう一つ、何度も繰り返し読んでいる本があります。 宮崎駿監督の映画『風の谷のナウシカ』の原作になっている全7冊シリーズのこちらの漫画。映画で描かれているのは序章にすぎず、読み返すたびに新たな気付きと感動を得られるところもお気に入り。確か、中高学生くらいの時に買いました。吸うと死に至る胞子を出す植物が育つ、腐海と呼ばれる森とその周辺諸国に住む人間や生き物達との共生が描かれています。一見すると悪と思われるものも、実は意味があって存在しており腐海の木々が胞子を放つのにもちゃんと理由がありました。どの本も、人間にとってなくてはならないのが森であり、自然と共生していくことの大切さを伝えてくれている物語。そしてそういった物語に、何故か強く心を揺さぶられる自分に気付きました。大学生生活も後半に入り、この先をどうしようか悩んでいた頃に好きなこと、興味のあることを深掘りしていくと、行きつき先は決まって自然、森、植物、庭etc…幼い頃に読んだ本の影響がこんなにも続くなんて不思議です。初めての就職先が天然木を扱う内装材メーカーだったのもその後も植物を扱ったり、自然素材にこだわったインテリア用品を扱うお店を選択したのも根っこの部分にある「自然との共生を大切にしていきたい」と願う気持ちからきていたんだな、と今ならとても納得できます。皆さんが影響を受けた物語は何ですか? 感想を送る